FRBの追加緩和が日本に迫る覚悟 2010/11/5付 日経

2010年11月5日金曜日

 米連邦準備理事会(FRB)が本気になってデフレ対策に乗り出した。長期にわたりゼロ金利政策を続けるとともに、市場に大量の資金を供給 する金融の量的緩和に踏み切った。中間選挙でオバマ政権が大敗し、経済を下支えする役割はいきおいFRBの双肩にかかっている。円高やデフレという課題を 抱える日本も、柔軟で機動的な対応が欠かせない。

 連邦公開市場委員会(FOMC)で決めたのは、2011年6月末までに総額6000億ドルの長期国債購入。それとは別に、FRBが保有する 住宅ローン担保証券(MBS)などの償還資金も、国債買い入れに充てる。向こう8カ月の国債購入額は合計8500億~9000億ドルと、円換算で70兆円 前後にのぼる。

 国債購入は長めの金利の低下を促し、経営者や投資家がリスクを取るのを助ける役割を果たす。加えて、景気対策のために赤字が膨らんだ財政 を、支援する狙いも見て取れる。米国の財政赤字は11年度(10年10月~11年9月)も1兆ドルを突破する見通しだが、FRBによる大量購入は赤字に 伴って発行される国債の大半を買い取ってしまう格好となる。

 FRBは09年にも長期国債の買い取りに乗り出した。その際は「中央銀行による財政赤字の穴埋め」に対する批判を意識して、購入額を3000億ドルにとどめた。今回は景気が腰折れし、デフレに突入してはならないと、財政との関係で「ルビコンの川」を渡ったようにみえる。

 中間選挙の結果、政権と議会の間でねじれが生じ、政府が有効な経済対策を打ち出せなくなる可能性が高まった。しかも住宅バブルの崩壊で家計 は過剰債務に直面し、不良債権を抱えた金融機関は、新規の貸し出しに二の足を踏んでいる。そんななか、機動的に動けるのは中央銀行だけだ、との考えが FRBを大規模な金融緩和に走らせたのだろう。

 FRBの緩和策がうまく効果を発揮してくれることを祈りたいが、その成り行きは予断を許さない。

 日本の経験からも、金融に亀裂が入った後の経済立て直しは容易でないからだ。例えば、米国は経営危機に陥った住宅金融公社を政府管理下に置き、住宅金融を下支えしている。ところが、その後も赤字が募り非常事態からの出口が見えない。

 米経済の失速は、輸出減少やドル安、株安など様々な経路で日本にも悪影響を及ぼす。日本にとっても、米国が直面する現状は人ごとではない。政策決定会合の日取りを前倒しした日銀は、リスクを点検し、次の一手の用意も怠るべきではない。

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