高速割引見直し値上げで建設費に回す無節操(4月10日付・読売社説)
2010年4月16日金曜日
高速道路建設費の確保に窮して、料金を実質的に値上げし転用する―。鳩山内閣がまとめた高速料金割引制度の見直し策を一言でいえば、こうなるだろう。
6月実施の新制度では、利用者の多くが負担増となりそうだ。経済効果が高く、事故防止にも役立つ路線の新設・拡幅は妥当だが、高速道整備に否定的だった鳩山内閣の姿勢と明らかに矛盾する。
いまだ旗を降ろさぬ高速道路の無料化政策にも反しよう。新制度に対する国民の理解を得るのは、容易ではあるまい。
新しい割引制度は、自公政権時代に導入された中身を、大幅に整理・統合するものだ。
目玉だった、自動料金収受システム(ETC)を装備した車を対象にした土日・祝日限定の「1000円走り放題」は廃止する。早朝、深夜など時間帯ごとの割引も、今年度限りでやめる。
その代わり、軽自動車は1000円、普通車は2000円、中型車以上は5000円などの上限を決め、それ以上の料金は取らないことにする。燃費のいい車を優遇する仕組みもある。
土日ばかりでなく平日にも適用し、ETCの有無を問わない。このため、ETCを付けていない車や平日に遠出する場合、恩恵は確かに大きいだろう。
だが、新制度には盲点がある。普通車などの平均走行距離は土日で約60キロ、平日なら約40キロだ。この程度走ったくらいでは料金が上限に達せず、支払うべき料金は現行より高くなるという。
首都高速と阪神高速については年末をめどに、都府県ごとの区分と一律料金制をやめ、500円から900円を走行距離に応じて支払うシステムに変える。
短距離の場合は割安になるが、長く走ると、負担増・減の二つのケースが出てくる。ドライバーも戸惑うのではないか。
今回、料金割引制度を見直すのは、高速道路建設の財源確保のためである。
料金割引の原資に国が手当てして残る2・5兆円から、今回の制度変更で使わずに済むようになる1・4兆円を、建設費に充てる計画だ。
鳩山内閣が昨年末、民主党に高速道路の整備促進を強く要請されたことで、原資に目をつけた。
建設費がどうしても必要というなら、きちんと予算化するのが筋だろう。一貫した高速道路政策が鳩山内閣にないから、こんな姑息(こそく)な手段を選ぶことになる。
(2010年4月10日02時18分 読売新聞)
・・なぜETCという優れたハイテクインフラを捨てるのか