菅新政権の「脱小沢」の看板は本物か 2010/6/8付

2010年6月11日金曜日

 菅直人新首相(民主党代表)の下での民主党役員人事が決まり、8日に発足する新内閣の全閣僚の顔ぶれも固まった。

 党務を担う幹事長には枝野幸男行政刷新相を起用した。小沢一郎前幹事長が廃止した政策調査会長ポストを復活し、玄葉光一郎氏を充てた。枝野、玄葉両氏はともに、小沢氏に批判的な「七奉行」の一員だ。

 同じ「七奉行」の仙谷由人氏の官房長官就任と合わせ、菅新首相は閣僚・党役員人事で「脱小沢」を強く印象づけた。一連の人事を好感し、各種世論調査で、民主党への支持率は急回復しているが、新執行部は懸案の小沢氏の国会招致問題などで実行力が問われる。

 小沢氏批判の急先鋒(せんぽう)だった枝野氏の幹事長起用には、小沢氏に近い議員だけでなく、菅グループからも異論が出ていた。しかし菅新首相は「選挙の顔」として、枝野氏の起用にこだわった。

 弁護士出身の枝野氏は論客として知られる。46歳の若さもあって、テレビの討論番組などで民主党の出直しを訴えるには適任だろう。ただ選挙や国会対策の手腕は未知数だ。

 玄葉政調会長は、小沢氏に党政調の復活を求める運動の中心メンバーだった。政調が廃止された小沢執行部では、党内の政策論議がなく、幹事長室に権限が集中していた。

 玄葉氏は公務員制度改革担当相を兼務して入閣する見通しで、内閣の政策決定に党の意見を反映させる新たな仕組みづくりを担う。小沢氏という重しがなくなったため、寄り合い所帯とやゆされる党内の多様な意見をまとめる力量が求められる。

 菅新首相は代表選で争った樽床伸二氏を国会対策委員長に充てるなど、党内融和にも腐心した。しかし野田佳彦新財務相、蓮舫新行政刷新相や安住淳党選挙対策委員長ら他のポストの顔ぶれを見ても、小沢氏に距離を置く議員の重用が目立つ。

  鳩山政権が退陣した理由の一つは、鳩山由紀夫首相や小沢氏の「政治とカネ」の不祥事で、有権者の信頼を失ったことにある。とくに小沢氏は元秘書ら3人が政 治資金規正法違反(虚偽記入)の罪で起訴されたにもかかわらず、国会で説明責任を果たしていない。野党側が小沢氏らの国会招致を求めるのは当然だ。

 枝野氏は小沢氏の政治倫理審査会出席問題について「本人の希望がベース」と述べ、慎重な考えを示した。しかし、それが許されるのか。枝野執行部が小沢氏の国会招致に取り組まなければ「脱小沢」の看板もすぐに色あせてしまうだろう。

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法科大学院 理念倒れの現状を改革せよ(6月6日付・読売社説)

 法律家の養成機関としての役割を担えない法科大学院は淘汰(とうた)される。それは、やむを得ない流れといえるだろう。

 兵庫県姫路市の姫路独協大法科大学院が、2011年度以降の学生募集を停止することを決めた。現在の在校生17人が修了する時点で、大学院を廃止する見込みだという。

 修了すれば新司法試験の受験資格が得られる法科大学院は、04年に各地で開校したが、撤退が決まったのは、今回が初めてだ。

 姫路独協大法科大学院の修了生で、新司法試験が始まった06年から09年までの合格者は全74校中、最少の3人にとどまっている。

 合格者が出なければ、学生も集まらなくなる。10年度入試では、定員20人に対して、受験者が3人で、いずれも不合格だった。

 教授会が「法曹界で活躍できる学生の確保は困難」と判断したのも、うなずける。法科大学院の乱立が招いた結果である。

 新司法試験の合格率は昨年、3割を切った。実績を残している大学院と、そうでない大学院との二極化が鮮明になってきている。下位校では、姫路独協大と同様の状況に陥りつつある大学院も少なくないだろう。

 入学志願者が減り、定員を削減した大学院も多いが、これは対症療法に過ぎない。今後は、適正な大学院数にするための統合や再編も避けられまい。

 法学部出身者に限らず、幅広い分野から法曹界に人材を集める。即戦力の法律家を養成する。こうした目的で、法科大学院が開設され、実務教育を重視したカリキュラムが組まれている。

 しかし、大学院の授業だけでは司法試験に合格できないとして、予備校に通っている大学院生が多いのが実情だ。

 一方で、大学院側が合格率の向上を目指し、試験対策に特化した教育をすると、評価機関から「不適合」の烙印(らくいん)を押され、改善を迫られる。法科大学院の理念に合致しないとの理由からだ。

 今後、評価のあり方を再検討し、型にはめた法科大学院の教育内容に、ある程度の自主性を認めることが肝要だろう。

 新司法試験の内容の見直しも不可欠である。詰め込み型の試験教育を受けないと、合格が難しいのであれば、旧司法試験の時代と変わらない。

 司法制度改革の柱の一つとして導入された法科大学院制度だが、(ゆが)みを早急に正さないと、その存在意義が問われることになる。

2010年6月6日01時43分 読売新聞)

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菅新首相は政策本位の政権運営目指せ 2010/6/5付

 民主党の菅直人氏が第94代首相に選出された。週明けにも組閣し、菅新内閣が発足する。

  昨年の衆院選の民主党マニフェスト(政権公約)では、財源の裏付けのない子ども手当の創設など、当面の選挙対策を優先した政策が目立った。鳩山政権発足後 も小沢一郎幹事長の選挙至上主義が、政策決定をゆがめた側面は否めない。菅新首相の誕生を機に、政策本位の政権運営に転換するよう強く求めたい。

党政調の復活は当然だ

  鳩山由紀夫首相はわずか8カ月半で退場した。鳩山氏は5月末に米軍普天間基地の移設問題を決着させるという約束を果たせず、社民党の連立離脱を招いたこと もあって、引責辞任に追い込まれた。鳩山、小沢両氏の「政治とカネ」の不祥事も響いた。菅新首相は有権者の信頼を取り戻し、統治能力のある政権の体制を整 える責任を負う。

 その際に重要なことは小沢氏の影響力を排除することである。鳩山氏は党務を完全に小沢氏に委ね、代表であるにもかかわらず党運営の蚊帳の外に置かれていた。

 党内では小沢氏が最高実力者と目されていた。内閣の下での政策決定の一元化という建前とは裏腹に、重要政策の決定に小沢氏が介入することもあった。党側の横やりで方針が二転三転した高速道路の新料金制度の迷走などを見れば、その弊害は明らかだろう。

  菅氏は4日の記者会見で内閣・党役員人事について「官邸の一体性、内閣の一体性、党の全員参加を目標にする」と述べるにとどまった。ただ3日の出馬記者会 見では小沢氏と距離を置く考えを示しており、内閣の要の官房長官には仙谷由人氏を起用する意向だ。仙谷氏は小沢氏に批判的な勢力の中心人物である。

  鳩山政権の政策決定が迷走した大きな理由は、鳩山氏の指導力不足とともに、首相官邸の調整力が弱かったことにある。菅新首相は閣僚に明確な指示を出して、 内閣の政策決定を主導してほしい。民主党が政権公約で掲げた閣僚委員会はほとんど機能しておらず、仙谷新官房長官の調整能力が試される。

  菅新首相は小沢氏が廃止した党政策調査会を復活させる考えを示している。政党が政策を議論する組織を持つのは当然であり、政調の復活を評価したい。小沢氏 一人が突出した存在だった党運営を改める象徴的な出来事といえる。民主党が当初、構想していたように政調会長が閣僚を兼務するのが筋である。

 鳩山政権では、経済財政担当を兼務した菅氏が、経済政策の司令塔を務めねばならない立場だった。しかし菅氏自身は、その経歴からみても適任だったとは言い難い。新政権では経済政策の司令塔役を誰に委ねるかが課題になる。

 政治主導の掛け声の下に、各省の政策決定は政務三役が中心になる体制に改められた。政治家が政策決定の責任を負うのは当然だが、省庁が蓄積したデータや官僚をうまく活用していない。政務三役には官僚を生かす度量がほしい。

  菅氏を代表に選んだ党代表選は政策論争がないまま終わった。4日の記者会見でも、菅新首相からは新政権のメッセージがほとんど伝わってこなかった。菅氏は 「強い経済、強い財政、強い社会保障を一体的に実現する」と強調しているが、将来の消費税の取り扱いなどを早急に肉付けし、具体案を示す責任がある。

政権公約の見直し急げ

 夏の参院選は迫っているが、菅新首相は党内で集中的に議論したうえで、自らの考えを参院選の公約に反映させなければならない。鳩山政権が準備した公約の中身をそのままにして、ただ表紙の顔を変えるだけでは有権者の理解は得られまい。

 鳩山首相は対米外交でつまずいた。この教訓を生かし、亀裂が生じた日米同盟の立て直しが急務だ。菅新首相は日米関係を外交の基軸にすえると同時に、中国との関係を重視する考えを示している。日米と日中を並列に置くようにも受け取れる。

 台頭する中国と良好な関係を築くことが、日本の最優先課題のひとつであることは確かだ。しかし日中間には東シナ海のガス田開発問題などの火種がくすぶり、中国の軍拡はアジア諸国の懸念を招いている。

 中国に責任ある行動を促し、安定した日中関係を築くには日米同盟の後ろ盾が必要である。菅新首相は普天間基地移設をめぐる先の日米合意を着実に実行し、対中政策でも日米が緊密に協調できる関係を築いてもらいたい。

 韓国哨戒艦の沈没事件を受け、緊迫する朝鮮半島の情勢からも目が離せない。鳩山政権は独自制裁の強化を決め、北朝鮮に圧力を加える姿勢を鮮明にした。この路線は北朝鮮側からの軍事挑発にも対応できる体制があって初めて成立する。新政権には万全の危機管理を求めたい。

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