日経社説 責任重大な第一生命の上場

2010年2月28日日曜日

 第一生命保険が4月に、保険契約者一人ひとりが会社の所有者となる相互会社から株式会社に衣替えする。東京証券取引所にも上場する。株主数は約150万人と日本最大になる見通しだ。上場の責任は重い。

 株式会社化は、蓄積してきた利益を株主資本とし、それを裏づけに株式を契約者に無償で割り当てる形をとる。株主となる契約者は保険金を受ける権利を持ちながら、株主総会で経営に対して発言できる。

 上場の第1の目的は、経営の選択肢を増やすことにある。上場によって、公募増資や社債の発行など多様な資金調達の道が開ける。株式交換による企業買収も可能になる。

 外部の株主の期待に応えるには、企業としての成長戦略を示すことが欠かせない。人口の減少で国内の保険市場は縮小している。欧米勢のように、中国など新興国に打って出ることが有効な選択肢となる。

 第2の上場目的は、財務の健全性を高めることだ。上場を表明したのは2007年12月だが、金融危機を経て、保険会社にとって資本増強の必要性は一段と高まっている。

 日本には、保険会社版の自己資本比率規制である「支払い余力比率規制」がある。保険金の支払いが膨らむリスクに対し、自己資本と有価証券の含み益をどの程度持っているかを測る。第一生命の前期末の支払い余力比率は768%と、警戒水準とされる200%を上回る。

 この規制は12年3月期に大幅に強められ、第一生命など大手生保の比率は現状の3分の2程度に下がるとされる。世界の保険監督当局が参加する保険監督者国際機構も、統一の規制づくりを始めた。グループ全体で十分に資本の厚みがないと、積極経営もままならない。

 上場には、経営に規律を与える効果がある。相互会社の社員総代会は、保険契約者が希望しても必ずしも出席できるわけではない。上場企業の株主総会は原則的にどんな株主でも出席できるだけに、経営を多角的にチェックできる。

 保険会社は契約者に保険金を確実に支払わなければならない。リスクを伴う成長戦略を求める株主に、保険という業務の特性を説明する責任が、上場後の第一生命にはある。


NIKKEI NET 全文引用
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20100227ASDK2600A27022010.html

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読売社説 新卒就職難 採用増の決め手は景気回復だ(2月26日付)

2010年2月26日金曜日

 この3月に卒業を予定している高校生や大学生の求職活動が、まだ終わっていない。

 文部科学省が今週発表した、高校生の昨年12月末現在の就職内定率は、74・8%で、前年同期より7・5ポイントも下がっている。

 大学生の内定率も昨年12月1日現在、73・1%で、1996年の調査開始以来、この時期としては最低の数字となった。

 一昨年秋以降の世界不況の影響で、企業が採用を絞り込んだ結果である。現時点では調査時より高い数字になっているだろうが、就職の合同面接会などには、今も多くの学生が詰めかけている。

 卒業まで、1か月しかない。各高校や大学は、さらに就職支援に力を尽くしてほしい。

 いったん高校や大学を出た既卒者は、4月入社の正社員としては採用しない企業が、大手では主流だ。在学中に内定先が決まらなければ、途端に門は狭まる。かつての就職氷河期には、やむなく非正社員になった人が多かった。

 このため、今年は、留年して来春の就職を目指す大学生や、就職をあきらめて専門学校などに進路変更する高校生も目立つ。家庭の負担も大変だろう。

 来春採用の就職戦線も厳しいとする見方がある。企業も新卒採用枠に既卒者を含めたり、夏や秋に既卒者の採用を実施したりするなど、若者に就職の機会を増やす工夫を、ぜひしてもらいたい。

 景気の好不況で卒業時に明暗が出るのは仕方がない。だが、若者が技術や技能を蓄積しながら経済活動を支えていくことで、社会は安定し、発展していく。

 日本経団連と連合が先月、新卒者の採用に努めるよう企業に呼び掛ける声明を出した。単なるポーズで済ませてはなるまい。

 就職難の中でも、高校の工業科の内定率は88・4%で、普通科の65・1%を圧倒している。全員の就職が決まった工業高校もあるそうだ。高等専門学校生や国公立の理系の大学生の内定率は、むしろ前年同期を上回っている。

 景気の動向にかかわらず、技術立国を支える人材を企業は欲しているということだろう。

 漫然と高校生活や大学生活を送っていては、就職も難しい。協調性や社会的な常識も企業は求めている。教育関係者には就職状況をよく分析し、学校教育を見直す契機としてほしい。

 採用拡大の決め手は、景気の回復だ。政府は景気対策に全力を挙げ、企業を側面支援すべきだ。

2010年2月26日01時09分 読売新聞)

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日経社説 日本企業が世界に羽ばたく経済外交を

2010年2月22日月曜日

社説 日本企業が世界に羽ばたく経済外交を(2/22)

 原子力発電所や鉄道など海外のインフラ受注競争で、日本企業が敗退する例が目立つ。インフラ受注のカギは技術や価格だけではない。事業の運営や人材育成をはじめ、相手国のさまざまなニーズに応える必要があり、軍事協力など別の要因が発注先選定に影響する場合もある。

 官民一体で商機をつかもうとする欧米諸国や韓国などに対し、日本企業は優れた技術を持ちながら、十分に競争力を発揮できていない。

アブダビの教訓に学べ

 巨大な需要をつかみ、それを日本の産業の今後の成長に結びつけるために、政府の側面支援を強化し、官民連携の体制づくりを急ぐべきだ。

 象徴的な商戦は、アラブ首長国連邦(UAE)アブダビ首長国の原発の建設(事業費約3兆6千億円)である。日米連合とフランス、韓国が競い、韓国が受注した。

 日韓の最大の違いは政府の取り組みだ。李明博・韓国大統領はトップセールスを繰り返し、公営企業である韓国電力公社が60年間にわたり現地で原発を運転する作業と、現地の技術者の訓練も受託した。

 発電事業を手がける電力公社と政府が前面に出た韓国に対し、日米連合の中核は、設備メーカーの日立製作所とゼネラル・エレクトリック(GE)。操業や人材育成などソフトが重要な商戦に、ハード中心の枠組みで対応したのが敗因の一つだ。

 ベトナムの原発第1期工事でも、日本勢はロシアに後れを取った。受注の見返りにロシアがベトナムに潜水艦を供与するとされる。軍事を絡めたビジネスは批判されるべきであり、武器輸出を原則禁止している日本が主導してこうした動きの広がりに歯止めをかける必要がある。

 その一方で、売り手の国の総合的な外交活動が商戦の行方を左右する現実も直視しなければならない。

 韓国政府は「原子力発電輸出産業化計画」をまとめ、日米仏が独占していた世界の原発市場でシェア2割を目指している。ドイツはウェスターウェレ外相が産業界の代表とともにアジアや中東を飛び回り、鉄道施設の売り込みに努めている。

 米国でもオバマ大統領が一般教書演説で「国家輸出戦略」を示し、2009年に1兆ドル強だった輸出額を5年間で倍増させると宣言した。

 ゲームのルールが変わったと考えるべきだろう。金融危機に伴う内需の停滞で、先進各国の政権は輸出促進にかじを切り始めた。アブダビの原発商戦で韓国が受注した金額は、約3.6兆円。高級乗用車を100万台売るのに相当する輸出額を一つの商談で獲得した計算になる。

 輸出を伸ばそうとする各国が照準を合わせるのは、まず途上国・新興国のインフラ建設である。発電所や送電網などの電力部門や、鉄道、港湾、道路などの運輸部門に、広大な市場が開けつつあるからだ。

 アジア開発銀行の試算によると、20年までにアジア域内だけで約8兆ドルのインフラ投資が必要とされる。上下水道や海水淡水化など「水ビジネス」も有望な分野だ。

 インフラ・ビジネスでは、得意とする製品やサービスを売り込むだけでなく、相手国が何を必要としているかを踏まえて包括的な解決策(ソリューション)を提供する力も問われる。企業も入札待ちから提案型へとビジネスを切り替えるべきだ。

 民間企業だけではリスクや責任を負い切れない場合も多い。特定企業に肩入れしない公平性や透明性の確保が大原則だが、政府の外交活動や公営企業の参加など公的部門の役割が今まで以上に重要になる。

新・重商主義が潮流に

 政府が輸出の先頭に立つ新しい「重商主義」の潮流の中で、日本も経済外交に力を入れないと商機をつかめない。外務省は05年に在外公館の企業支援ガイド ラインを改訂した。大使館や領事館には、相手国への働きかけなど営業支援が期待されている。外交官が「民間の商売には介入しない」などと語る話は聞かなく なったが、まだ諸外国に比べて連携が十分とはいえない。

 Jパワー(電源開発)が海外で発電所の受注を増やし、JRグループが新幹線やリニアで国際営業を展開するなど、インフラ関連企業の姿勢も積極的になりつつある。水の分野では東京都や大阪市、川崎市など技術・ノウハウを持つ自治体の海外事業への関心も芽生え始めている。

 こうした動きを支援し、日本全体の競争力強化につなげる努力を政府は惜しむべきではない。

 首脳や閣僚による売り込みが功を奏する例もあれば、輸出金融や貿易保険、政府開発援助(ODA)など資金面の扱いが重要な場合もある。

 経済産業省は海外インフラ受注の支援強化の方針を決めたが、経産省だけでなく日本の総合的な外交力が試されている。鳩山政権は、これを経済成長戦略の柱の一つに明確に位置付けるべきだ。

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日経社説(2/15) :対岸の火事でない南欧諸国の財政危機

2010年2月15日月曜日

対岸の火事でない南欧諸国の財政危機(2/15)

 日本の「ギリシャ化」を防げるだろうか。

 欧州連合(EU)は財政危機のギリシャを支援する方針を決めた。しかし同国のほかスペイン、ポルトガルなど南欧諸国の財政問題に解決のめどはついていな い。「国が対外的に支払い不能となる恐れ」(ソブリンリスク)が世界の投資家に強く意識され、金融・資本市場に波紋を広げている。

不安抱える日本国債

 日本はこれらの諸国と違い国債消化を外国に頼っていないこともあり国債市場は落ち着いている。とはいえ財政の実態は南欧諸国よりも悪い。多額の国債発行 の継続や貯蓄率の低下などから、国債市場をめぐる環境は悪化していくのが必至である。ユーロ圏の財政危機は決して対岸の火事ではない。

 内閣府は国と地方の財政が著しく悪化している事実を示す推計をまとめた。借金に頼らずに、過去の借金の元利払い以外の支出をまかなえるかどうかを示す基礎的財政収支が2009年度は40兆6000億円の赤字と、赤字幅が前年の2.5倍に膨らみ過去最悪になる。

 この基礎的収支が黒字になって名目経済成長率が国債金利より高い状態が続けば財政は健全化に向かう。小泉内閣は11年度の黒字化を目指していたが、今や、その実現ははるかかなたに遠のいた。

 国と地方の公的債務残高の国内総生産(GDP)に対する比率(経済協力開発機構の推計)は昨年末に189%となったもよう。これはギリシャ(115%)、スペイン(59%)を大きく上回る。

 こうした情勢から、米格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズは1月下旬、日本国債の格付け見通しを「安定的」から「引き下げ方向」に変更した。

 日本国債の93%は国内で保有されている。このため外国の投資家が資金を引き揚げたギリシャのような混乱は起きないという見方が多い。しかしデリバティブ(金融派生商品)の普及で、国債の現物を持たない外国人投資家が国債の先物売りを仕掛ける例も出ている。

 少し長い目でみると、国債を国内で消化しきれなくなる懸念も強い。個人金融資産は個人の負債を除くと約1065兆円。この金額は、貯蓄を取り崩す高齢者 の増加であまり増えない。一方、国と地方の長期債務残高は今年度末に825兆円となり今後も増える。個人金融資産をすべてつぎ込んでも国債、地方債を消化 できない日がやがて来る。

 財務省は外国人投資家への国債の販売を増やす方針。だが、外国の投資家は必ずしも安定的な保有者ではないうえ、外国に頼ると日本の国債利回り(10年物で年率1.3%台)が米国債(同3%台後半)などに影響されて上昇する恐れもある。

 もし国債消化に支障を来せば、政府は日本銀行に市場を通じた国債の買い取り(今は月1兆8000億円)を増やして金利上昇を抑えるよう望むだろう。だが 日銀がそれに応じても結果がどう出るかは読めない。「財政規律が緩むという見方が広がって国債金利はさらに上がる」と予想するエコノミストもいる。

 国債金利の上昇は住宅ローン金利を含む長期金利全体を押し上げて経済に打撃を与える。そうした事態を避けるには、財政を健全にする政策を示して債券市場に安心感を与えることが肝心だ。税収拡大につながる名目経済成長率の引き上げ、歳出削減そして増税が柱になる。

成長戦略と再建策早く

 名目成長率を高めるため、短期的には財政による需要創出が必要としても、中長期的には民間の潜在力を生かして、産業の構造を時代に合うものに変える政策が要る。

 政府は環境、健康、観光を中心とする成長戦略を検討中だ。方向は正しいが、関係者の抵抗にひるまず、大胆な具体策を示してほしい。医療、農業、電力、運 輸などの分野での規制改革は重要だ。建設業のように供給過剰が続く産業で働く人を成長分野にどう移すかの政策も問われる。財政再建と一見、矛盾するが、企 業の投資意欲を引き出すには法人税軽減も進めたい。

 歳出の削減について、枝野幸男行政刷新相は(1)事業仕分けを通じて政策目的に沿わないような支出を減らす(2)その上で優先順位の低い政策を見直す――という順序で進める考えだ。この方針に沿って大幅な削減を早く実施してほしい。

 歳出削減と並行して増税も検討すべきだ。消費税のほか、相続税も見直してよいのではないか。高齢者の年金・医療に多額の財政資金をかけるのに、高齢者が残した資産を相続する人の4%強しか課税の対象にならないのは公平さを欠く。

 政府は夏に財政健全化の枠組みを決める。成長戦略の具体策とともに信頼性の高い政策を求めたい。

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日経社説(2/13) :ギリシャ危機が示したユーロの弱点

2010年2月13日土曜日

ギリシャ危機が示したユーロの弱点


 欧州連合(EU)の首脳会議はギリシャの財政問題の解決に向け、単一通貨ユーロの加盟国が協調行動することで合意した。肝心の支援の中身は決められず、15日からの財務相会合に議論を先送りした。

 ギリシャの財政危機が浮き彫りにしたのは、通貨はひとつにしたが共通の財政政策を持たないというユーロの制度的な弱点だ。ユーロ圏の16カ国の金融政策は、欧州中央銀行(ECB)がひとりで担うが、財政は加盟国の政府に任されたままだ。

 欧州経済統合の象徴であるユーロはドルと並ぶ基軸通貨と期待されていた。その信認が動揺しだしている。外国為替市場ではEU首脳会議後も不安定な相場が 続いている。円に対しこのまま大幅なユーロ安が進むと、日本企業の輸出採算の悪化を招くだけに、我が国にとってもユーロ圏の混乱はひとごとではない。

 ギリシャは前政権が野放図なばらまきを続けてきた。そのうえに、経済統計までごまかしたことが明らかになり、一気に信用を失った。

 パパンドレウ現政権は意欲的な歳出削減策を打ち出したものの、45万人の抗議ストに見舞われるなど社会に混乱が広がっている。同様に赤字が膨れ上がるスペイン、ポルトガルでも、財政再建と雇用不安の板挟みで政権が苦しんでいる。

 ギリシャの2009年の財政赤字は国内総生産(GDP)比で12.7%に膨らんだ。ユーロ圏の中核国の財政状況の悪化も見逃せない。各国が景気刺激のた めに財政支出を増やしたためで、09年の財政赤字のGDP比はフランスが8%前後となった。ドイツですら今年は6%に拡大する見通しだ。

 EUの安定・成長協定は、年間の財政赤字を3%以下に抑えるよう各国に求めている。この約束が空文化しているのが現実である。

 ドミノ倒しのような南欧発の信用不安の拡大は、防がなければならない。その一方で、危機に陥れば仲間が助けてくれるという甘えが助長されれば、財政規律の柱である安定・成長協定が揺らいでしまう。

 ギリシャ危機への対応は、国際通貨基金(IMF)など外部機関に支援を仰ぐべきだという声も欧州域内にあった。だが、そもそも欧州自身の対応能力こそが試されているのだ。そのことを忘れないでほしい。

 今回、EU各国が首脳会議で合意した「ユーロ加盟国の協調行動」は、破局を避けるための最低限の合意にすぎない。ユーロ圏の財務相会合は市場の不安を沈静させるための責任ある行動を問われている。

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