新卒者体験雇用事業について
2010年8月19日木曜日
働くナビ:就職氷河期対策で導入された「新卒者体験雇用事業」の成果と課題は。
◆就職氷河期対策で導入された「新卒者体験雇用事業」の成果と課題は。
◇企業と若者が「お見合い」 少ない事務職の求人、広報体制の強化も必要
◇中卒~大卒の702人利用し244人が正規雇用に
第2の「就職氷河期」とも言われる厳しい就職戦線。政府は、卒業後も就職活動を続ける若者を支援しようと「新卒者体験雇用事業」を新設した。1~3カ月の間、体験的に働くことで企業と若者の“お見合い”期間を設け、正規雇用へつなげようとする取り組みだ。実際に就職に結びついた人もいるが、学生や企業に対する広報などで課題が浮かんでいる。
7月21日、長妻昭厚生労働相は、飲食店チェーンなどを展開する企業「ラムラ」の食品加工工場(千葉県市川市)を訪れた。同社は新卒者体験雇用事業を使って今年4月から3人を受け入れている。そのうち県立高校を今春卒業した馬場綾子さん(18)を1カ月の体験雇用を経た5月中旬から正社員として採用した。
馬場さんがこの制度を知ったのは、「高校卒業後も就職が決まらず、いつまでもふらふらしているわけにはいかないので」と訪れた地元のハローワーク。「新卒者体験雇用制度」と書かれた紙を見つけて担当者に話を聞いたことがきっかけだった。「いきなり入るより試してみて大丈夫だったら、という安心感があった」と応募。正社員として就職につながり、喜んでいる。
この制度をハローワークで知った馬場さんだが、最初はハローワークには若い人が利用するイメージがなく、未就職のまま卒業するまでは家族に勧められても行く勇気がなかったという。「学校などを通じて制度を知ることができればもっと利用する人がいると思う」と話す。
広報の問題点は企業向けにもあった。工場を訪れた長妻氏が、同社の村川明社長らに制度をどこで知ったか尋ねたところ、「新聞記事でたまたま見つけた」。人事担当者がハローワークに詳しい内容を問い合わせ、制度を利用したという。
村川社長は「入社しても3カ月で辞めていく人もいることを考えると(入社前に体験的に働ける同制度は)いい制度。学校と企業とハローワークが一体となってコミュニケーションが取れれば、もっといい成果が上がるのではないか」と指摘する。
長妻氏は視察後、記者団に「広報など取り組みを強化しないといけない」と述べた。
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同制度は昨年の緊急経済対策に盛り込まれた。長引く景気の低迷から、新規採用に及び腰になる企業に採用を促すとともに、就職が決まっていない若者には仕事内容を見極める機会を提供。職種の「食わず嫌い」にならないよう選択肢を広げる機会を作るのが狙いだ。今年度限りの事業で、約2400人分の予算3億7400万円を09年度2次補正予算で計上した。
6月からは体験雇用の期間を、1カ月から最長3カ月まで拡大した。受け入れ企業には1カ月目は8万円、2、3カ月目はそれぞれ4万円が奨励金として支給される。
4月以降、全国で702人が利用、320人が体験期間を終了し、うち244人が正規雇用された(7月11日現在)。利用者の内訳は大卒299人(うち正規雇用は100人)、高卒344人(同117人)、中卒59人(同27人)。
ただ、大卒者の希望が集中する事務職の求人は多くないため、体験雇用の受け皿さえ足りない「ミスマッチ」が生じるなどの課題もある。
【山田夢留】毎日新聞 2010年8月2日 東京朝刊
厚労省、新卒1万人就職支援 来年度、試験雇用の助成増額
- 2010/8/19付 日経
厚生労働省は、大学生や高校生の就職を後押しするため、2011年度から若年層を対象に支援制度を強化する。新卒者を試験的に雇う企業を 支援する「新卒者体験雇用事業」で、企業への助成額を5~9割引き上げ、対象者を年2400人から1万人超に拡大する。フリーターを正社員として雇用した 企業に最大100万円を支給する制度でも、対象者を25歳未満に広げる。景気の先行き懸念に対応し、雇用の安定を目指す。
今月末に締め切る11年度予算の概算要求に盛り込む方針だ。菅直人首相は17日、「若い人の雇用が大変厳しい」と話しており、雇用情勢次第では経済対策として一部施策を前倒しで実施する可能性もある。予算規模は合計で300億~400億円程度の見込みだ。
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