G20が通貨安競争回避などで一致:識者はこうみる

2010年10月25日月曜日

 [東京 25日 ロイター] 韓国の慶州で23日に閉幕した20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、焦点だった通貨問題をめぐり通貨安競争に自制を求めるとともに、中国に為替相場の切り上げを促した格好となった。市場関係者のコメントは以下の通り。

●動きにくいなか81円維持がポイント、FOMCも視野

 <みずほ証券グローバルエコノミスト、林秀毅氏>

 20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議を経ても、日本の介入のしにくさは変わらない。米国の本音としては、日本の介入と中国 の介入では位置づけは異なるのだろうが、表だってそうも言いにくいだろう。かといって、日本が介入しないというわけでもない。11月の20カ国・地域 (G20)首脳会議までは動きにくい展開が続くだろう。

 ドル/円は81円を維持できるかがポイントになる。G20首脳会議に先立って米連邦公開市場委員会(FOMC)が予定されており、米金融緩和への思惑も出てきそうだ。週後半には、ドル安/円高圧力が徐々に強まるとみている。

●債券、底堅い展開か

 <ドイツ証券 チーフ金利ストラテジスト 山下周氏>

 G20共同声明では「通貨の競争的な切り下げ回避」「為替レートの過度な変動を監視」という両論が盛り込まれた。基本的には、中国の人民 元切り上げを意図したものだろう。ただ、急激なドル安・円高時以外には、円売り介入は難しいともいえる。FOMCが量的緩和に入っていく可能性が高いこと を考えると、ドル安、円高基調が「自然と」続くとみられる。

 きょうの円債相場は底堅く推移するのではないか。先週は5年や20年の供給に加えて、海外株高もあって、円債は弱含んだ。FOMCまで様 子見の投資家が多いため、戻りは限られそうだ。ただ、円高基調に変わりなく、海外株高でも日経平均の上値は重い。FOMCというイベント後には相場が堅調 に推移する可能性は高いとみている。世界景気減速でも、実効性の高い財政・金融政策がないという閉塞(へいそく)感が金利低下圧力となるだろう。

●日本は短期的には介入しにくい、円高進行を懸念

 <東洋証券 情報部長 大塚 竜太氏>

 事前の予想通り、「通貨安競争」阻止の具体策はなく、株式市場などマーケットへの影響は大きくないだろう。ただ一応、通貨の競争的な切り 下げを回避するとの共同声明は採択されており、日本としては短期的には為替介入をしにくくなったことはネガティブかもしれない。各国の利害が対立するな か、通貨に関して具体的な合意に達するのは難しいということが、あらためて明らかになり、円高基調が続くことが懸念されよう。ただドル円は81円前半の水 準が続いており、この水準には日本株の耐性ができつつもある。

●ドル安基調変わらず、ポジション面から底堅さも

 <クレディ・スイス証券チーフ通貨ストラテジスト 深谷幸司氏>

 20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では「経済ファンダメンタルズを反映し、より市場で決定されるシステムに移行」する必 要があることが声明に盛り込まれた。中国の人民元安誘導をけん制したものだろう。一方、「準備通貨を保有する国は過度のボラティリティを警戒すべき」とし ており、米国の金融緩和によるドル安にも一定のけん制がかかった。

 為替市場からみれば、G20で、米追加緩和観測によるドル安の基調的な流れは変わらない。ただ、一方で、ドル売りポジションが大きく積み 上がっており、さらに膨らませることはしにくい。ドルは底堅くなりつつあり、米連邦公開市場委員会(FOMC)くらいまでのドル/円の下値は80.50円 程度だろう。G20への警戒感が消えたとしても、ドル売りが急に強まるとはみていない。

●為替安定に効果、株価はさらにこう着

 <日興コーディアル証券 シニアストラテジスト 河田 剛氏>

 20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の声明では、通貨安競争をけん制する内容だったことから、今後円高局面で日本の通貨当 局による為替介入は難しくなるだろう。ただ、米国をはじめ他の先進国も通貨安を回避するとの見方ができるので、為替は安定的になるのではないか。ドル/円 は目先81―82円の水準が続くとみている。そうなると、レンジ相場が続く日本株は、さらにこう着感が強まることになる。目先は企業決算の想定為替レート を注目しており、円高想定でも業績見通しが強気なら買い手掛かりになる。

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G20財務相・中央銀行総裁会議の主な成果

[25日 ロイター] 韓国・慶州で23日閉幕した20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、市場で決定される為替レートシステムへ の移行と、過度の外部不均衡の是正に必要なあらゆる政策を講じることで合意が成立した。G20財務相・中央銀行総裁会議の主要な成果は以下のとおり。

 1)共同声明は、経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)を反映し、より市場で決定される為替レートシステムに移行し、通貨の競争的な切 り下げを回避することを明記。G20主催当局は、今回の声明で為替問題に関する表現が「市場に基づく(market oriented)」から「市場が決定する(market determined)」に変更されたことは、トロントで開かれた前回のG20会合に比べ一段と強いメッセージを送ったことを意味する、との見方を示し た。

 ただ、今回の声明は、市場が期待していた、各国が自国通貨の上昇容認を約束する形にはいたらず、全体としては、通貨問題にかかわる声明内容は市場の期待を十分に満たすものではなかった。

 2)米国の量的緩和策をめぐっては、銀行セクターの流動性が過剰になり、新興国市場へのホットマネーの流入につながっているとの批判が あった。共同声明は、米国など準備通貨の発行国の責任を強調し、先進国は為替レートの「過度の変動と無秩序な動きを監視する」と明記した。

 また会議では、ドイツをはじめ、米国の金融緩和政策を公に批判する声があがるなど、緊張が続いていることが示された。ブリューデレ独経済技術相は23日、米国の流動性拡大策は為替操作に当たると批判した。

 3)今回の会合では、経常収支に数値目標を設定して制限するという米国の主張は認められなかったが、来月ソウルで開かれるG20首脳会議 でも、数値目標を含む「指標」をめぐる議論がある見通し。これらは国際通貨基金(IMF)が監督する。ただ、制限値を超えた国への制裁権限はない。

 4)IMFにおける新興・途上国の発言権強化に向け、議決権と出資比率を拡大することで合意。最貧国の投票権を保護しつつ、ダイナミック な新興国・途上国への、また過小代表国への6%以上の出資比率移転については、2012年の年次総会までに完了すべく作業する。2013年1月までに出資 比率計算式の包括的な見直しを行い、また2014年1月までに次期出資比率見直しを完了する、とした。

 こうした改革により、世界経済の問題解決の責任を新興・途上国にも負わせることが可能になる。とはいえ、ブラジルから韓国にいたるすべての国の政策実施状況を監督するのは困難と予想される。

 ただ、G20主催当局は、IMF改革をめぐる今回の合意は大きな成果、と評価している。 

 5)長年の課題となっていた、財政健全化、金融政策、為替レートに関するマクロプルーデンシャルの枠組みについては、包括的な枠組みでの取り組みにとどまり、具体策には踏み込まなかった。

 この枠組みをめぐっては、詳細が今後協議される見通しで、今回はいいスタートになったとの楽観的な見方がある一方、共同声明は行動を伴う可能性が低い文言にすぎないとする悲観的な見方もある。

 6)金融安定理事会(FSB)が提案した銀行の新たな自己資本・流動性規制の承認については、合意にあたり、おそらく今回の会合でもっとも異論がなかったとみられる。この合意は、金融システムの立て直しに向けたG20の取り組みにおける重要な節目を意味する。

 ただ、「大きすぎてつぶせない」銀行問題への対応はまだ初期段階にある。金融システム上重要な金融機関(SIFIs)の「損失吸収」能力を強化すべきという点では幅広いコンセンサスがあるものの、その対象とすべき金融機関についての合意はまだない。

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「有期労働」規制は雇用不安を広げる 2010/10/4 日経

2010年10月4日月曜日

 パートや派遣、契約社員など期間を定めて契約を結ぶ「有期労働者」をめぐり、雇用の新しいルール作りが今秋から労働政策審議会で始まる。低賃金の人を減らし、正社員への転換を雇う側に促すためとして、パートなどを一時的な仕事に限るといった規制の強化が議論される。

 だが規制を強めることで、契約期間に定めのある人たちの処遇が改善するかは疑問だ。円高で企業は海外移転を急ぎ、コスト削減に必死になって いる。人件費の増加を嫌い、正社員への登用は進まないのではないか。期限付きの契約を認める仕事を限定すれば、働けなくなる人が増えるだけという懸念があ る。

 総務省の労働力調査によると、有期労働者は契約期間が1年以内の人だけでも2009年に751万人と雇用者数の14%弱を占める。完全失業率は8月も5%と高い。規制強化が招く雇用不安は深刻になろう。

 学識者からなる厚生労働省の有期労働契約研究会は先ごろ、審議会の議論のたたき台となる報告をまとめた。期限付きで契約を結べる仕事を一時的、季節的な業務に限ったり、契約の更新回数に上限を設けたりすることなどの検討を求めている。

 上限を超えて契約が更新された場合、正社員のように「期間の定めのない雇用契約」に移ったとみなすなどの仕組みも挙げている。

 こうした規制ができた場合に懸念されることはいくつもある。企業は雇用契約を、更新の上限に達する直前で打ち切ろうとするのではないか。そうすると、これまで繰り返し契約を交わしてきたパート社員などは働き続けることができなくなる。

 契約を結べる仕事が限られ、非正規の労働力が使いにくくなれば、企業の海外移転がいっそう進み、国内の雇用がさらに減りかねない。

 昨年7月の有期労働者に対する厚労省の調査では、労働時間や日数が希望に合うなどの理由で仕事に満足していると答えた人が5割強いた。自らの意思で期限の定めのある仕事に就いている人は多い。規制はそうした人たちを困らせる結果になる。

 正社員と同じような仕事なのに賃金が低い人は少なくない。期限付きで働く人の処遇の向上が大切なのはもちろんだ。それには原資となる企業の利益を増やす必要がある。労働力の使い勝手を悪くする規制の強化は処遇の向上を難しくしかねない。

 臨時国会では製造業への派遣などを原則禁止とする労働者派遣法改正案が審議される。これも企業の活動を制約する。労働者保護をうたって雇用不安を広げては本末転倒だ。

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米小売業者、高コストを慎重に消費者に転嫁へ * 2010年 10月 4日 WSJ

 ビールからドレスまで、ステーキからタイヤまで、さまざまな主要消費財を販売する米小売業者は値上げによる米国経済力の集団テストを行いつつある。

 コーヒーチェーンのスターバックスや衣料品販売のジョーンズ・アパレル・グループ、それにグッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバーなどは原料費の上昇と格闘しており、その一部を消費者に転嫁つつある。

 小売業者がこうした値上げをせずにどこまで耐えられるかは、連邦準備理事会(FRB)の米経済の見方に影響し、新たな景気刺激策が必要かどうかの判断を左右する可能性がある。FRBは9月、追加刺激策を検討している主な理由が低いインフレ率であると指摘した。

 商務省が1日に発表したところでは、変動の大きい食品とエネルギーを除いた個人消費支出(PCE)物価指数の「コア」は前月比0.1%の上昇で、7月と同じだった。前年同月比では1.4%の上昇で、FRBが望ましいとするレンジを下回った。

 カルバンクラインやトミー・ヒルフィガーなどのブランドを持つフィリップス・バン・ヒューゼンのキリコ最高経営責任者(CEO)は「だれもが値上げを口 にしている」と指摘した。同CEOは、同社のコストは5~7%増えているとし、今年末から3~4%値上げをしてコスト上昇分の一部を取り戻したいと述べ た。

チャート

PCE物価指数(前年比)推移

 今のところ、景気回復力に対する疑念は消えないでいる。1日発表された指標は景気が大体において失速していることを示した。

 消費者が値上げを受け入れるなら、景気低迷が峠を越えたことを示唆しているといえるが、インフレがスパイラルに陥ることの警告とも受け取れる。消費者が 値上げを拒否すれば、これは挫折を意味し、企業利益に打撃を与える恐れがある。値上げで売上高が落ちれば、一部の企業は値上げを撤回して値引きに走る可能 性がある。

 大和キャピタル・マーケッツの主任エコノミスト、マイケル・モラン氏は「いつでもこうした妥協や瀬踏みというものがある」と述べるとともに、「インフレ率は最近見られたような低水準にとどまろう」との見通しを示した。

 その上で同氏は、高失業率が続き賃金の伸びが低いことから、消費者の値上げ受け入れの程度は限られていると指摘した。

 それにもかかわらず、企業は一部の労働コスト、特に海外製造におけるコストと、商品価格が上昇していると指摘する。商品価格は通常、企業のコスト構成では小さいが、最近は綿花が今年これまでに38%、コーヒーが33%、ゴムが17%など、急激な値上がりを見せている。

 一部の企業は今年に入って値上げに成功し、インフレへの影響もほとんど出ていない。グッドイヤーは1日、消費者向けタイヤを6%値上げしたが、これは6 月の同幅の値上げに次ぐものだ。この6月の値上げによって同社の北米売り上げは第2四半期に増加した。同社は原料の値上がりを理由に挙げた。

 リセッションは定義上では1年以上前に終わったにもかかわらず、多くの企業は消費者の反発とライバルに売り上げを奪われるのを恐れて、値上げを控えてい る。しかし、機は熟したと判断する企業が出てきた。サイモンクチャー&パートナースのパートナー、フランク・ルビー氏は「今は、価格支配力がほとんど、あ るいは全くないと仮定するよりもむしろ自分の価格支配力を試してみるべきときだ」と指摘した。


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