G20財務相・中央銀行総裁会議の主な成果
2010年10月25日月曜日
[25日 ロイター] 韓国・慶州で23日閉幕した20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、市場で決定される為替レートシステムへ の移行と、過度の外部不均衡の是正に必要なあらゆる政策を講じることで合意が成立した。G20財務相・中央銀行総裁会議の主要な成果は以下のとおり。
1)共同声明は、経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)を反映し、より市場で決定される為替レートシステムに移行し、通貨の競争的な切 り下げを回避することを明記。G20主催当局は、今回の声明で為替問題に関する表現が「市場に基づく(market oriented)」から「市場が決定する(market determined)」に変更されたことは、トロントで開かれた前回のG20会合に比べ一段と強いメッセージを送ったことを意味する、との見方を示し た。
ただ、今回の声明は、市場が期待していた、各国が自国通貨の上昇容認を約束する形にはいたらず、全体としては、通貨問題にかかわる声明内容は市場の期待を十分に満たすものではなかった。
2)米国の量的緩和策をめぐっては、銀行セクターの流動性が過剰になり、新興国市場へのホットマネーの流入につながっているとの批判が あった。共同声明は、米国など準備通貨の発行国の責任を強調し、先進国は為替レートの「過度の変動と無秩序な動きを監視する」と明記した。
また会議では、ドイツをはじめ、米国の金融緩和政策を公に批判する声があがるなど、緊張が続いていることが示された。ブリューデレ独経済技術相は23日、米国の流動性拡大策は為替操作に当たると批判した。
3)今回の会合では、経常収支に数値目標を設定して制限するという米国の主張は認められなかったが、来月ソウルで開かれるG20首脳会議 でも、数値目標を含む「指標」をめぐる議論がある見通し。これらは国際通貨基金(IMF)が監督する。ただ、制限値を超えた国への制裁権限はない。
4)IMFにおける新興・途上国の発言権強化に向け、議決権と出資比率を拡大することで合意。最貧国の投票権を保護しつつ、ダイナミック な新興国・途上国への、また過小代表国への6%以上の出資比率移転については、2012年の年次総会までに完了すべく作業する。2013年1月までに出資 比率計算式の包括的な見直しを行い、また2014年1月までに次期出資比率見直しを完了する、とした。
こうした改革により、世界経済の問題解決の責任を新興・途上国にも負わせることが可能になる。とはいえ、ブラジルから韓国にいたるすべての国の政策実施状況を監督するのは困難と予想される。
ただ、G20主催当局は、IMF改革をめぐる今回の合意は大きな成果、と評価している。
5)長年の課題となっていた、財政健全化、金融政策、為替レートに関するマクロプルーデンシャルの枠組みについては、包括的な枠組みでの取り組みにとどまり、具体策には踏み込まなかった。
この枠組みをめぐっては、詳細が今後協議される見通しで、今回はいいスタートになったとの楽観的な見方がある一方、共同声明は行動を伴う可能性が低い文言にすぎないとする悲観的な見方もある。
6)金融安定理事会(FSB)が提案した銀行の新たな自己資本・流動性規制の承認については、合意にあたり、おそらく今回の会合でもっとも異論がなかったとみられる。この合意は、金融システムの立て直しに向けたG20の取り組みにおける重要な節目を意味する。
ただ、「大きすぎてつぶせない」銀行問題への対応はまだ初期段階にある。金融システム上重要な金融機関(SIFIs)の「損失吸収」能力を強化すべきという点では幅広いコンセンサスがあるものの、その対象とすべき金融機関についての合意はまだない。
0 コメント:
コメントを投稿