日経社説 エコカーへの期待高める日欧3社提携(3/26)
2010年3月28日日曜日
日産自動車が独ダイムラーと相互出資交渉を進めていることを明らかにした。日産の筆頭株主でもある仏ルノーも加わり、3社連合で環境技術の開発を強化するという。
自動車メーカーにとって、二酸化炭素(CO2)の排出の少ない環境対応車の開発は最大の社会的責任であるばかりでなく、売れ筋でもある。新たな提携によって、環境技術の開発・実用化に弾みがつくことを期待したい。
一昨年のリーマン・ショック以降、自動車産業は数々の激震に見舞われた。世界最大のメーカーだった米ゼネラル・モーターズ(GM)は法的整理の道をたどり、世界最強とされたトヨタ自動車も大量リコール問題でつまずいた。
世界市場の重心も西から東に移動し、米欧市場が足踏みする一方で、中国やインドなどアジアの新市場が急速に成長している。技術面では100年続いたガソリンエンジン一辺倒の時代が終わり、ハイブリッド車や電気自動車など環境対応車をめぐる競争が幕開けした。
個々のメーカーにとって急激な環境変化への対応は待ったなしだ。昨年末にはスズキと独フォルクスワーゲンが提携し、両社あわせればトヨタを上回る巨大連合が誕生した。
日産・ルノーとダイムラーの提携交渉も、背景にあるのは規模拡大やライバルとの協力によって激震を乗り切ろうという経営トップの意志だ。日産のカルロス・ゴーン社長はここ数年、GMや米クライスラーとの提携に意欲を燃やしたが、実を結ばなかった。
次の提携相手として、ダイムラーに注目したのは、もともと研究開発の地力があるうえに、ディーゼルエンジンとモーターを組み合わせたディーゼルハイブリッ ドなどに優れるからだろう。日産・ルノーに一日の長がある電気自動車と組み合わせれば、次世代エコカー技術の厚みが増すことになる。
積極的に提携戦略を仕掛ける日産に比べると、トヨタとホンダの2社は「自前主義」を掲げ、他社との提携にはさほど関心を示してない。
1990年代末に加速した前回の自動車再編ブームではダイムラー・クライスラーなどの大型合併は失敗したのに対し、派手な再編に背を向けて、自社の実力向上に専念したトヨタやホンダが飛躍した。
提携や再編はそれ自体が目的ではない。日産再生で一時はカリスマ経営者ともてはやされたゴーン社長が提携を実現に導き、その成果をどう生み出すかに注目したい。
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