日経社説 民主に郵政逆走を止める気はあるか(3/30)

2010年3月30日火曜日

 鳩山民主党政権は「官から民」を進めるのか、それとも「民から官」への逆走を黙認するのか。郵政事業の今後を巡る深刻な閣内対立をどう解くかで、方向がはっきりする。

 発端は国民新党代表の亀井静香郵政担当相と民主の原口一博総務相が合意した郵政見直し案である。

 亀井氏は24日、原口氏同席の記者会見で、郵便貯金の預入限度額をいまの2倍の2000万円に上げるなどの案を発表した。「鳩山由紀夫首相も了解ずみ」と念を押した。

 亀井氏はこのほか、日本郵政のグループ内取引で消費税を免除する意向も示した。

 これに仙谷由人国家戦略相や菅直人副総理・財務相ら民主党の閣僚が一斉に反発した。亀井、菅の両氏は郵貯限度額を巡り「連絡した」「聞いていない」とテレビ番組でも水掛け論になった。内閣としてのまとまりを欠き、醜態をさらした。

 30日の閣僚懇談会で打開策を探るが、露呈した与党内の基本的な路線対立が簡単に収まる兆しはない。

 亀井氏は小泉政権の郵政民営化を全否定し、全国郵便局長会を支持母体とする国民新党を率いる。郵貯や簡易保険の規模拡大で、全国一律の郵便・金融サービスの原資をまかなう考え方だ。民間金融機関の活力を奪い、非効率な官製金融を温存させるおそれがある。

 民主党は2005年の衆院選で郵貯限度額を段階的に500万円に下げる縮小論を主張した。今回の案は正反対だ。仙谷氏は郵貯拡大でもほとんどが国債に回り、それが経済にゆがみをもたらすと指摘した。

 まっとうな主張だが、いまになるまでなぜ口を閉ざしていたのか。

 政府内の混乱が増幅したのは、郵政事業の将来像について定見を示さない首相の指導力不足が大きい。米軍普天間基地の移設先をめぐる迷走と同じ構図だ。政権としての意志がみえず、意見調整も十分に機能していない。

 鳩山政権は連立を組む社民党や国民新党の主張にも耳を傾けざるをえない立場にある。だが、政府の関与が続く郵貯を膨らませ「脱官僚依存」を後退させれば、有権者の失望を買うだけだ。

 首相や閣僚は日本の金融システムの中で郵政をどう位置付けるか、もう一度原点に立ち返って議論すべきだ。特に民主党には改革の「逆走」とも言うべき流れを本当に止める気があるかどうかが問われる。

 限度額の引き上げ幅を縮めたり、結論を先送りしたりして当座をしのいでも、何の解決にもならない。


日本経済新聞全文引用
http://www.nikkei.com/news/editorial/article/g=96958A9693819699E0EBE2E2E68DE0EBE2E1E0E2E3E28297EAE2E2E3?n_cid=DSANY001

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