みずほの「次の10年」の行方 日経2010/5/16付
2010年5月21日金曜日
総合金融大手のみずほフィナンシャルグループが、普通株による8000億円の増資を発表した。経営の改革案やグループの3会長の退任も公表することにより、みずほの変わる姿勢を示そうとした。変身できるかどうかは資本の充実だけでなく、グループの融合にかかっている。
増資の背景には、銀行の自己資本比率に関する新規制がある。バーゼル銀行監督委員会は、融資などのリスク資産に対して、配当を機動的に減らせる普通株や利益蓄積などで構成する「狭義の自己資本」を、厚く積むよう求める方向だ。
リーマン・ショック以降、三菱UFJと三井住友の2グループは2回の普通株増資に踏み切った。みずほは09年7月に次いで今回が2度目。自己資本が厚くなれば、資本規制が強化されても、企業に成長資金を供給する機能を保つことができる。
株式市場が不安定な中で円滑に増資を進めるには、中期的な成長の見取り図の提示が欠かせない。改革案は3年間で連結最終利益を2倍に増やす計画を打ち出した。目標を達成するには、収益の見込める分野に機動的に打って出られるよう、グループ経営の無駄をなくす必要がある。
持ち株会社の前田晃伸会長、みずほコーポレート銀行の斎藤宏会長、みずほ銀行の杉山清次会長が退任する。それぞれ旧富士銀行、旧日本興業銀行、旧第一勧業銀行の出身だ。旧3行の実力者が長く経営にとどまっては、融合も進めにくい。
3会長の退任は、経営の効率を高めるきっかけになりうる。管理部門やIT(情報技術)システムなど目に見えにくい部分だけでなく、傘下の2つの銀行の統合を検討する時も近づいているのではないか。
旧3行が今の持ち株会社の前身「みずほホールディングス」を設立したのは、10年前だった。世界有数の規模を誇る金融グループの誕生は、個人から大企業ま で幅広い金融サービスを提供し、経済の活性化につながると期待された。03年に多くの取引先が総額約1兆円の増資に応じたのも、そうした気持ちの表れだ。
旧3行の個別の利害を超えた経営の実現は、当時から指摘された課題だ。みずほが次の10年に踏み出す今も、まったく同じことが言える。
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