電気自動車でも主導権を握るためには 日経2010/5/23付
2010年5月26日水曜日
トヨタ自動車は電気自動車の米ベンチャー企業、テスラ・モーターズに約2%出資し米国で電気自動車の共同開発や生産に乗り出す。
トヨタがこれまで環境対応車の主軸に位置づけてきたのは、ガソリンエンジンと電動モーターを組み合わせたハイブリッド車だった。
今回、電気自動車にも力を入れていくと表明したことは、自動車産業がガソリン車から電気自動車の時代に移るきっかけになる可能性がある。二酸化炭素の排出削減を考える上でも影響が大きい。
トヨタにとっては米国でのイメージ回復という狙いもあったかもしれない。800万台に及ぶリコール(回収・無償修理)問題では社会的評価と業績の両面で打撃を受けた。ゼネラル・モーターズとの合弁工場を閉鎖すると決めた際も世論の風当たりは強かった。テスラとの共同事業ではこの工場の一部を使うという。
とはいえトヨタがこの時期に電気自動車への本格的な参入を打ち出す意味は大きい。最大の自動車市場となった中国や韓国では電気自動車の心臓部となるリチウムイオン電池の開発などで新興企業が相次ぎ生まれ技術力を高めつつある。
米国ではオバマ政権が自ら主導し電池技術などを持つ企業への資金支援を打ち出した。インターネットの民生利用に成功した1990年代末と同様、国の技術を有望な事業に転用しようとする動きもある。
日本も力のある企業が出てきてはいる。だが、電気自動車を次の時代の主軸に位置づけ、実用化を計画している自動車大手は日産自動車など一部に限られる。百年に一度といわれる技術の移行期に出遅れる懸念さえ指摘されていた。
トヨタが提携するテスラは設立から7年の若い企業だが、その製品は米国で徐々に支持を集めている。自動車生産の規模や実績ではトヨタが上でも、日本の自動車がどうしたら米国市場で再び成功できるか、吸収すべき要素は多い。
並行して検討すべきは自動車産業の構造転換だ。日本の自動車産業は部品メーカーも合計すると100兆円に達する。「構造が簡単で部品の数も少なく、電機メーカーが部分的には強みを持つ」という電気自動車がもし広く普及するようになれば、今の自動車産業への影響は甚大だ。
ガソリン車の量産開始から2世紀めに入った自動車産業で、日本企業は今後もトップグループにいられるか。試されるのはそうした大きな問題だ。電気自動車に本格的に手をつけ始めたトヨタへの期待は大きい。
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