NPO税制―誰もが支えられる工夫を(5/6 朝日)

2010年5月8日土曜日

鳩山由紀夫首相が力を入れる「新しい公共」作りに向け、特定非営利活動法人(NPO法人)の税制見直しが決まった。NPOを力強く発展させ、市民社会を充実させるテコとなるよう、中身を工夫したい。

 見直しの柱は、個人の寄付を増やすための優遇措置の拡充や、対象となるNPO法人の認定基準の緩和だ。年末の税制改革大綱に盛り込むため、これから具体的内容を詰める。

 寄付の優遇は従来、寄付額を課税対象となる所得から差し引く所得控除だけで、高所得層にしか恩恵が及ばないと批判されてきた。

 今後は新たに寄付額の一部を納税額から差し引く税額控除も選べるようにする。首相は、寄付額の半分を控除し、控除額の上限を所得の4分の1とする考えを示した。政党や政治団体への寄付が30%税額控除なので、それより優遇するとの判断だ。

 市民の活動を納税者が直接支える流れを太くする意味でも、この措置を歓迎したい。ただ、サラリーマンには控除を受けるのに確定申告が必要なことも壁になっている。年末調整で済むようにするべきだ。

 優遇策はすべてのNPO法人が受けられるわけではない。国税庁が一定の基準で「公益性」を認めた認定NPO法人だけが享受できる。だが、全国でNPO法人が約4万あるのに認定NPO法人は127しかない。そこで今回、認定要件の緩和も打ち出された。

 これまでの基準は事業などの収入総額のうち、3分の1以上を寄付が占めるよう求めている。だが、事業収入が多いと基準が達成しにくくなるジレンマがあったり、費目の分類が複雑で実際には税理士の支援が必要だったり、と問題が多い。

 今回、「一定額以上の個人寄付が一定の数だけあればいい」との基準も作り、併用する方向になった。

 だが、甘くし過ぎると脱税の隠れみのに悪用される懸念もある。制度づくりで注意すべき点だ。

 大事なのは、一般の人々から見て「寄付に値する信用の置けるNPO法人」を増やすことだ。その点で、NPO法人側にも反省すべき点は多い。

 活動の実態や財務内容、人事の理由などを対外的にきちんと説明しない例も少なくない。

 日本で寄付をしている人の数は米国に比べ見劣りはしないが、金額が小さい。NPO法人の中身が不透明なので、思い切った応援を決めかねている面もあるようだ。

 NPO法人を支える制度作りは政府だけの仕事ではない。NPO法人有志により統一の会計基準や経営原則のチェックリストを作る動きが進んでいる。NPO法人の自立と質の向上を促すために力を合わせてほしい。

5/6 朝日

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