43歳に明日を託した英国 日経2010/5/15付
2010年5月21日金曜日
英国の総選挙を受けて誕生したキャメロン新政権が、沈滞していた同国の空気を変えつつある。国内では政権発足の翌日に、中央銀行総裁から歳出削減への支持を取りつけ、米英外相会談でイランの核問題を協議することも決めた。
英国民が選択したのは政治指導者の「若さ」である。第1党となった保守党のキャメロン党首と、副首相に就任した自由民主党のクレッグ党首は、ともに43 歳。敗れた労働党のブラウン前首相は59歳だ。各党の政策の違い以上に、指導者の新鮮さが勝敗を左右したとみるべきだろう。
キャメロン氏は、就任時に44歳直前だったブレア元首相を抜き、19世紀初頭のジェンキンソン首相以降で最も若い英国の首相となる。
新閣僚の顔ぶれも若い。38歳のオズボーン財務相を筆頭に、ヘイグ外相が49歳、フォックス国防相は48歳である。経験が必要な分野にベテランを配しながら、政権の中核は30~40代が担っている。
新政権に課題と不安が多いのは事実だ。財政赤字を減らす具体的な方策では、保守党と自民党の意見調整は簡単ではない。選挙制度改革をめぐる対立点も残っている。欧州連合(EU)との関係についても、両党の基本的な立場に隔たりがある。
同床異夢の連立政権を運営していくには、さまざまな困難が伴うだろう。だが、今回の政治の世代交代によって、金融危機後に閉塞(へいそく)感が漂っていた英国社会に明るい変化が出ることが期待できる。
国民が政治の刷新を求めたのは、日本も同じである。しかし、若返りを果たした英国とは対照的に、昨年9月に発足した当初の鳩山内閣の閣僚平均年齢は60歳を超えていた。
次世代の活躍を待望する声が多くても、安心して政治を委ねられる若手が見あたらない。常に新しい指導者を育てながら、必要な局面での世代交代に備える。そんな新陳代謝の仕組みが、日本の政界に欠けているのではないか。
若さは時に経験不足を意味する。だが、過去のしがらみや成功体験にとらわれないからこそ、時代が要請する改革を実行できる場合もある。政党政治の歴史を築いてきた英国から、日本が学ぶべき点は多い。
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